エッセイ |
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このあいだ悲しい話がありました。それは谷川俊太郎さんがお亡くなりになったという話でした。
ずいぶん昔ですが、谷川先生の詩を「いいなあ」と思いながら読んていたところに、尾上墨雪さんから電話があり、谷川俊太郎さんの「みみをすます」という詩を曲にしてくれとおっしゃいました。ちょうどその時に読んでいたのがまさにその「みみをすます」でしたので、偶然に驚きながら、二つ返事でやらせていただくことになりました。
さて、作曲する目でその詩を眺めてみますと、「みみをすます」という言葉が何度も何度もあります。それをライトモチーフのように扱うというのが当然の考えだと思うのですが、そうするにはあまりにも多いので、音楽的に行き詰ってしまいます。人間にとってとても大事なことを聞き逃すなという詩だと思いましたので、「みみをすますと何が聞こえてくるのか」に焦点を当てるように作りました。果たしてこの曲が舞踊になるのかと思いましたけれども、墨雪さんが見事にやってくれました。これはぼくの忘れられない曲の一つです。
そのときに、そのうらはらにあるような詩「とっきっき」と「ののはな」にも目が留まりました。これは子どもの言葉遊びのような詩ですが、「みみをすます」とは好一対になるのかなと思いました。こういう曲はなかなか三味線伴奏では難しいのですが、三味線で敢えて作りました。
今度の「子どものための邦楽 クリスマスコンサート」では、当初演奏するのは「とっきっき」のみと考えていましたが、谷川先生を偲ぶよすがにと思い、「ののはな」も演奏することにしました。
「ののはな」は、三世今藤長十郎先生の創作の手法をいただきまして、三味線の演奏者には難しすぎるような運指があります。演奏には苦労しますが、新しい三味線の手法で不協和音や嫌な音ばかり続けるような痛いような音ではなくて、やはり美しいメロディが浮き上がってくるような曲を作りたいと思ってのことです。ぼくの思惑通りにいったかどうかは、皆さんに聴いていただいて判断していただけたらと思います。
谷川俊太郎先生の思い出の曲を今度はぼくも客席で聴いて、静かに哀悼の意を表したいと思います。
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